近年カーボンニュートラルの流れを受けて、日本だけでなく世界のさまざまな国々が温室効果ガスの削減に積極的に取り組んでいます。
温室効果ガスの中でもCO2は特に温室効果の高いガスであり、人為的な要因で多く発生するため、どのようにしてCO2を削減していくかが重要となってきています。
今回はCO2削減に大きく貢献できると注目されているダイレクトエアキャプチャという新技術について紹介していきます。
ダイレクトエアキャプチャ(DAC)とは

ダイレクトエアキャプチャとは言葉の通り、大気中のCO₂を直接回収する画期的な技術のことです。
石炭火力発電所の廃止や再生可能エネルギーの導入といった経済活動に制約を与えることなく、大気中の温暖化ガスの濃度だけを減らすまさに夢の技術です。
工場や発電所などの排気ガスからCO2を回収する技術には、地中にCO2埋めて貯留する「CCS」Carbon dioxide Capture and Storageという技術も注目されています。
CCSは、技術自体はすでに一定程度確立しているものだそうです。
しかし、地震のリスクや場所の制約、また、地中に埋めたCO2が再度漏れ出さないかどうかの安全性、さらにはコストが高いということが課題として残っている状態です。

- メリット
DAC技術の利点は、限られた土地と水の使用で空気中のCO2を回収できることです。
植物はCO2を吸収してくれるため、これまで植林などの手法が用いられてきましたが、DAC技術を用いるとより効率的にCO2の回収が実現できるとされています。
2050年に温暖化ガス排出量を実質ゼロにする脱炭素の救世主になる可能性を秘めていいます。

- デメリット
現状ではまだ回収コストが高く大規模な実用化は難しいですが、海外ではすでに15のプラントが世界で稼働しています。
回収したCO2の使い道は?
回収したCO2は地中に埋めたり、プラスチックや医薬品の原料として利用することができます。
スイスのスタートアップ企業「クライムワークス」社は空気中のCO2を取り除くDACで最先端を走っています。
18機のファンが吸い込んだ空気を約100度に加熱し、特殊なフィルターでCO2を吸着するシステムで、1年で約900トンのCO2を回収できる。
さらに、回収したCO2は温室にパイプで送り、作物の光合成を活発化させる「肥料」にすることができます。
これにより、畑のトマトやキュウリなどの収穫量が最大20%増えるといいます。
コカ・コーラの子会社Valserは、ClimeworksのDACプラントで回収したCO₂を炭酸水の製造に利用している。飲料業界で初の試みをおこなっています。

また、新型コロナワクチンを輸送するのにはドライアイスが必要であり、日本では海外輸入に頼っている現状なので、CO2を回収した後でも大きく利用できる点も非常に評価されています。
また、CO2をメタンやメタノールに変えてエネルギーとして活用する研究も進んでいるようです。
ダイレクトエアキャプチャの課題
SDGsの目標達成には、2030年までに1年間で1000万トンのCO2を吸収する必要があると推定されています。
それを実現する規模の工場を建設・運用するには、巨額の費用がかかる可能性があることが現在の課題となっている。
現在では将来必要とされるであろう大規模な範囲での実証実験がまだ行われていないため、最終的にどのくらいのコストがかかってくるかが不明となっています。
また、日本では実用的なところだと、水素の燃料による目標「水素基本戦略」を2017年に掲げ、2030年までに80万台の燃料電池車を目標としています。